日々体も心も成長している子どもたち。

 

今回のテーマは、人との関わりが増えてきた子どもたちが経験する『けんか』。

 

親がこどものけんかにどう関わったらいいのかについてご紹介します。


子どもの発達とけんかについて

 

 けんかは、一人遊びの時期をほぼ過ぎたくらいに「物のとりあい」から始まることが多く、幼稚園でいうと年少くらいの時期です。この時期は、「とる」以外の方法を知らずに、友達が使っているものを使いたくなって黙ってとったり、力ずくでとったりすることが原因でけんかになります。

 

 いろいろな言葉を使い始める年中くらいになると、物のとりあいに加えて、「言葉の誤解」なども加わってきます。言葉が足りなかったり、自分の気持ちをうまく伝えられなかったり、きつい言い方をしてしまい相手を傷つけてしまうのが原因です。

 

 小学校にあがる前くらいになると、グループや仲間意識の芽生えとともに、考え方の違いや、発言力が強い子と弱い子の違いなど、より複雑なけんかへと変わっていきます。また、親の目の前でのけんかというよりは園や学校など親が見ていないところでのけんかが増えていくのも特徴です。


親の関わり方について

  公園で、自分の子ども(3歳)が砂場に遊び道具を持っていき、砂の山を作っています。しかし、そこで同年齢くらいの子どもと遊び道具のとり合いになり、相手の子どもが自分の子をたたき始めてしまいました。

 

皆さんなら、こんな時どうしますか?

 まず、子どもが手を出しはじめたら、すぐに仲裁に入りましょう。その後、それぞれの言い分を聞いて、お互い何をしたいのかを探ります。親は、どちらが悪いと決めるのではなく、「自分のスコップでもっと遊びたかったんだね」「このスコップを使いたいんだね」など、それぞれの気持ちに共感してあげることが大切です。そうすることで、子どもの気持ちが少し落ち着いていきます。

 

 さらに相手の子どもには「貸してほしいときは『かして』と言ってね」と伝えたり、子どもには「この山ができたら貸してあげたらどうかな?」「順番につかって みたらどうかな」など子ども同士が納得する方法をいくつか提案してみましょう。子どもたちは、大人のこうした声掛けによって、友達と仲良くする方法を学んでいきます。

 

 もし、子どもが園や学校であった不満を言ってくる場合は、子どもが嫌な気持ちになったことを受け入れ、「大変だったね」と共感の言葉をかけてあげてください。この時、気をつけたいのが親同士のやり取りです。集団生活でのトラブルは先生に任せるのが鉄則です。くれぐれも親同士で解決しようとせず、先生に様子を見守ってもらうように相談しましょう。


けんかは「成長の証」

 

 人間関係づくりの原点は、幼児期にあります。子どもたちは遊びを通して、より深く人と関わり、けんかをしながらコミュニケーションのとり方を学んでいきます。3歳頃までは自分中心だった子どもも、友達とあそんだりけんかをしたりする中で初めて周りの人の気持ちに気付いたり、想像したりすることができるようになっていきます。そのような意味では、けんかは、子どもたちが人と関わり始めた成長の証とも言えます。

 

 子どもがけんかをした時は、まず、子どもの気持ちを受け入れたり代弁したりすることで安心させてあげましょう。その後、けんかをした相手の気持ちを伝えたり、謝り方を教えたりするとよいでしょう。この繰り返しで子どもは友達と仲良くする方法を次第に学んでいきます。また、「困ったら、お母さん(お父さん)に言ってね」と子どもがなんでも言える関係をつくり、親は焦らず、ゆっくりと子どもの成長を見守っていきましょう。

 

 幼児期のうちに友達とたくさん遊んだりけんかをしてコミュニケーションの仕方を身につけておくと、小学校以降の友達作りが楽しいものになりますよ。


「こどものけんか」への関わり方

1. 見守りながら、怪我しそうな時は仲裁に入る
2. それぞれの気持ちに共感して寄り添う
3. 子ども同士の足りない言葉を代弁して補う
4. 解決のための方法を一緒に考える

※ 2017年8・9月号掲載


★教えてくれたひと


宮崎大学附属幼稚園 教頭
宮崎国際大学 非常勤講師

福島 裕子 先生

「幼児期で一番大切なのは、良い行動を教え、できた時にしっかり認め、ほめることを繰り返すこと」と語る。幼稚園勤続28年。幼稚園教育の指導研究を行っている。