子どもに何度言っても伝わらず、イライラしたりがっかりした経験はありませんか。

でも、その「伝わらない」理由や「伝え方」が分かれば、親も気持ちが楽になるかもしれません。

今回は、子どもに伝える時のコツをご紹介します。


伝わらないのには理由がある

 

 お出かけの準備やおもちゃの片付けなど、何度子どもに言っても伝わらずイライラした経験はありませんか。「どうしてすぐできないの。さっきも言ったじゃない。」というやり取りの繰り返しに疲れ果てている方も多いのではないでしょうか。

 

 実は、子どもに話が伝わらないのには理由があります。その理由の一つは、発達段階によるものです。幼児期は、まだ語彙も少なく、記憶の容量も小さいため、一度にたくさんのことを言われても全てを記憶し動くことは難しいのです。

 

 また、二つ目の理由は脳の構造にあります。バスケットボールの試合中にパスの本数を数えてもらうある実験では、試合途中にコートの真ん中に着ぐるみのゴリラがでてきたにも関わらず、全く気づかない人もいることが分かりました。人間の脳は同じものを見ているようでいて、実は人それぞれ見えているものは違います。つまり、伝えるときに子どもが親と同じものに注目しているとは限らないのです。


伝える時のポイント

 

 例えば、「片づけ」が伝わらないという場合。片づけの意味がよく分からない子どもは、どう動いたらいいのか分からず、困ってしまいます。そんな時は、どこに何をおさめたらいいのか、具体的に伝えましょう。また、片付けしやすいように 片付ける場所を整えてあげましょう。分類を細かくせず、大ざっぱな収納で良しとすることもポイントです。

 

 他にも、「あれしてこれしてこうしなさい」と一度に言ってしまうことはないでしょうか。子どもの記憶の容量は、まだ小さいので一度にたくさんのことを覚えておくことができません。一つひとつを短い言葉で、ゆっくりはっきり伝えるようにしましょう。

 

 伝える時は、テレビなどを消してなるべく刺激が少ない落ち着いた環境で伝えることも大切です。また、具体的に見本を見せるのも効果的ですよ。片付けも遊びのひとつと考えて楽しみながら一緒に片付けてみませんか。


困った時は、観察と視点の転換を

 

 もし、なかなか伝わらないと悩んだ時は、まず状況を俯瞰 し子どもを観察してみましょう。一歩引いて少し冷静になることで、伝わらない理由が見えやすくなります。

 

 また、ちょっと視点を変えてみることも大切です。何度言っても伝わらない時は、逆に、どんな時にどんな内容であれば子どもは話を聴いてくれるのか思い出してみましょう。

 

 そして、どんな声かけなら反応してくれるか、話の内容、伝え方、伝えるタイミングなど、さまざまな要因を組み合わせながら、伝わるポイントを探してみましょう。この伝わるポイントが分かることで、どう伝えたら良いのかが分かり、伝わらない悩みを解決するヒントになります。

 

 人によって、見えている世界は違いますが、お互いの世界を理解しようとすることで、上手にコミュニケーションを取ることができるようになりますよ。


「聴く」お手本を見せましょう

 

 子どもの言葉づかいや素振りが親にそっくり、なんてことはありませんか。子どもは、周りの大人を真似ることでできることを増やしていきます。夫婦や大人同士で話をする時は、ちゃんと相手に視線と心を向けて話を聞くなど、子どもの良いお手本になるよう心がけましょう。子どもが話を聴いてくれない時は、お手本を示すという意味でも、子どもの話を聴くことから始めてみませんか。

 

 子どもは、繰り返しの中で必ず成長していきます。子どもにも自分にも完璧を求めすぎず、肩から力を抜いて、この時期子どもがしたり感じたりすることを楽しみながら子育てできると良いですね。

 

 お母さんの笑顔は家族みんなの幸せに繋がります。怒ってばかりだな~、と思ったら、お母さんがちょっとホッとできる自分へのご褒美の時間を持ってみるのも効果的ですよ。


子どもに伝えるときのポイント

 

1. 子どもにわかりやすい言葉で

 

2. してほしい動作を具体的に

 

3. 短い言葉で一つずつ順番に

 

4. なるべく落ち着いた環境で

 

 

※ 2019年4・5月号掲載


★教えてくれたひと

公認心理師
臨床発達心理士 

 

柿田 美香さん

 

児童の発達に携わって31年。現在、九州保健福祉大学総合医療専門学校の講師や綾町などの自治体、宮崎市内の小児科で子どもの発達相談を行っている。