2017年2・3月号掲載 特集「春から始めるこどもの習い事」より

 

 

 習い事は、子どもの可能性を広げられる喜びも大きい一方で、悩みが尽きないのも事実。

そこで子どもの成長に寄り添う子育てを提唱している宮崎大学教育学部附属幼稚園教頭 福島裕子先生に、習い事のメリットと親の役割についてお話を伺いました。


 子どもにとって習い事をするメリットは、好きなことを深めて自信をつけたり、できなかったことを克服したりと様々ですが、今回は子どもの成長の観点から3つご紹介します。


 一つ目は、体験不足を補うこと。現代の子どもたちは、便利な環境が整っていく一方で、ハサミなどの道具を使う機会が少なかったり、歩くことや運動遊びが少なかったりと、体験不足になりがちです。普段の生活ではなかなか補えないものを習い事で探してみるのも良いでしょう。

 

 二つ目は、脳の活性化。脳科学の分野では、褒められて満足する体験をすると、ドーパミンが出て脳が活性化すると言われています。特に、子どもにとって先生という立場の人から褒められると、特別な感じもしますよね。

 

 三つ目は、人との関わりが増えること。習い事は、通っている園以外の友達や異年齢との関わりも生まれます。これは、小学校に入ってからの関わりにもつながり、コミュニケーション力を育む機会にもなります。



 親は子どもを褒める、話を聞いてあげるなどのサポート役です。子どもにとって習い事は、その特別な時間を過ごすことだけでも大きな一歩です。その場にいれたことや、その日挑戦したことなどを聞いて、子どもの頑張りをぜひ褒めてほしいと思います。

 また、練習が辛そうなときは楽しくできる方法を一緒に考えることが大切です。先生に相談してみても良いかと思います。私自身も長男が中学生の時に、「週に一度、この場でピアノに触れさせてもらえればそれで良いので…」と先生に相談し、結果、息子は楽しくピアノを続けられた経験があります。大切なのは、習い事は楽しむことが大前提だということを親が忘れないことではないでしょうか。

 

 もし、子どもがやめたいと言ってきたら、その理由を聞いて、原因が習い事自体の時はしばらく休んだり、人間関係の時はクラスを別にしてもらったりと、習い事自体を嫌いにならない方法を考えてみましょう。



 習い事を始めるきっかけや時期については、まずは子どもがやってみたいと意欲を見せた時です。例えば、友達が通っているから自分も同じことをやりたいと言う時は、やりたい理由を具体的に聞いてみて、習い事自体に関心があれば体験させても良いと思います。また、親がさせたいと思う場合は、子どもに習い事を通じて、どんな力をつけさせたいのかを考えておくことが大切です。

 

 特に入園や入学を迎えるお子さんは、春は新しい環境に慣れるまでストレスがたまりやすい時期になります。実際に習い事を始める時期は、子どもの様子をみながら決めていきましょう。



 習い事を始める前には、子どもが楽しく取り組めそうか体験してみることをおすすめします。体験に行った時には、その教室の雰囲気や子どもと先生の関わり方をみてみましょう。雰囲気が温かく優しい感じで、子どもたちの表情が生き生きとしていたら、まずは大丈夫なのではないでしょうか。

 指導される先生が、子どものその時の成果を確認して認め、褒めているか。また、いけない事をしたときにきちんと指導をしているかなど、普段の様子も見られると良いと思います。

 また、送迎なども含めて親子で無理なく続けられそうかも検討してみてくださいね。


 

1.子どもが好きなこと、興味があることに目を向けよう

 

2.子どもの「やりたい」意欲の芽生えに寄り添おう

 

3.子どもの話を聞いて、ほめてサポートしよう

 

4.まずは体験で、雰囲気や相性を確かめよう

 

5.子どもの満足度は「表情」から読み取ろう

 


子どもにあった習い事を見つける にはどうしたらいいですか?

音楽や運動など、子どもが何に興味を持っているか、何が好きなのかを普段の生活の中から探ってみましょう。向き・不向きよりも、楽しそうに取り組んでいるかどうかが大切ですよ。





子どもを褒めるコツを教えてください

「1人で頑張れたこと」「先生の話をよく聞いていたこと」「ニコニコしていたこと」など、少しでもできたことをみつけて褒めましょう。ひと月前や1週間前などを振り返ってみても、成長に気づくことがありますよ。また、頑張ったご褒美は物を買うことだけでなく、映画や公園、好きな遊びなどで特別感をもたせるのもよいでしょう。




「行きたくない」と言われた時の 対処法を教えてください

すぐに辞めるのではなく、様子をみながら、子どもがどれくらい困っているのか、悩んでいるのかを探っていきます。例えば、ピアノの練習が大変そうなときは、少しずつ区切って弾かせて、できていることを褒めるのも一つの方法です。子どもは、苦しい時期にこそ、手間をかけて自信を持たせるような声かけをしてあげると、あとでぐんと伸びますよ。ただし、人間関係などで合わないというときは、辞める選択もあります。子どもの表情をよく見てあげて下さいね。





「集団生活の練習にもなっている気がします」

3歳の子にバレエを習わせています。私から離れるときに泣いて心配したこともありましたが、徐々に先生やお友達との時間が楽しくなってきたようです。今ではスキップが少しできるようになったり、足が上がるようにもなり自信がついてきて、教室の日が待ち遠しくなったようです。幼稚園に通わせる前の練習にもなったなと思いました。


★話をお伺いした方

ふくしま ひろこ
福島 裕子 先生

「幼児期で一番大切なのは、良い行動を教え、できた時にしっかり認め、ほめることを繰り返すこと」と語る。幼稚園勤続28年。幼稚園教育の指導研究を行っている。(2017年1月現在)