心や体が成長途中の子どもたち。

 

子どもたちがすくすくと成長していくために大人ができることは何か、

 

発達をサポートする専門家に子育てのヒントを教えてもらいました。


発達の道のりは、みんな違う

 

 毎日子どもと向き合っていると、わが子の成長に不安を感じてしまうことも多いのではないでしょうか。子どもたちの発達の仕方は、兄弟姉妹でも違うように100人いれば100通りですが、大きく分けると二つのタイプに分けることができます。

 

 一つは、まんべんなくできることが増えていき、おおむね平均的に発達がすすむタイプ。もう一つは、年齢などに関係なく、足踏みをしたり一気にできたりする、個性的に発達がすすむタイプ。どちらのタイプも、子どもは大人に心配をかけて成長していくのですが、特に、個性的な発達をする子の場合は、できることとできないこと、得意なことと苦手なことの差が大きいので不安に思う方もいるかもしれません。しかし、子どもたちはその子のスピードでちゃんと毎日成長しています。まずは、大人になるまでの発達の道のりはみんな違うことを知っておきましょう。


得意なところに注目しよう

 

 発達支援の現場で私たちが大切にしていることが「得意なところを生かす」という考え方です。得意なところを伸ばすことで、子ども自身の全体的な力を伸ばしていく支援を心がけています。

 

 大人は、つい、できないことや苦手なことを気にしてしまいがちですが、苦手なことやできないことを克服するにはたくさんのエネルギーが必要です。また、親子でストレスを抱えやすくなります。

 

 一方で、得意なことやできることに目を向けて伸ばしていくと、「自分はできる」「もっとやってみたい」と意欲を高めることにつながります。この「できる」という体験の積み重ねが自信になり、自然と苦手なことにも挑戦したり、できなかったことも前よりできるようになったりします。そして、子どもの表情が生き生きと輝くので、親も気持ちが楽になると思いますよ。


得意なところは、子どもが好きなことから探そう

 

 得意なところは、子どもが好きなことから探してあげましょう。もし、子どもの好きなことがわかりにくい場合は、子どもがよく話す内容や行動から探したり、園の先生に尋ねてみるのものいいでしょう。休みの日を利用して、外に出かける中で好きなことを見つけるのもいいですね。

 

 好きなことを見つけたら、次は深めてあげましょう。そうすることで、神経を刺激し脳の発達を促します。子どもは楽しさが分かるとさらに意欲が高まります。例えば、魚が好きな子どもには、図鑑や絵本を一緒に読んだり、水槽にいる魚を観察したり、さらに川や海に行ってみたりと、いろいろな角度から好きなことを楽しんでみましょう。すると、子どもの興味がどんどん深まっていくのが実感できると思います。

 

 好きなことをやっている子どもの姿は、目の輝きも違いますよね。大人にできることは、好きなことを見つけ、深める経験の場を広げてあげることだと思いますよ。


子どもの成長に寄り添おう

 

 子どもの得意なところを伸ばして、苦手なことも自然と克服させていくには、まず、大人に「寄り添う気持ち」と「待つ姿勢」を持ってほしいと思います。大人がゆったりと構えることができれば、子どもたちの成長を見守る余裕ができ、子どもの良いところも見つかりやすくなります。

 

 また、子どもの得意なことの中で、特に秀でた部分のことをピークスキルと呼びます。このピークスキルは磨けば才能になっていきます。子ども自身が好きなことを存分にできる環境を整えることで、子どもの才能を伸ばしてあげて欲しいと思います。

 

 子どもの発達の仕方はそれぞれ違いますが、いつかは大人になっていく子どもたち。今の成長を存分に楽しみながら子育てをしてみて下さい。また、子育てなどで悩んだときは一人で抱え込まず、周りの人や専門家に頼りましょう。子どもも大人も、寄り添う存在は大切ですよ。


★ 得意なことに注目した子育て

1. 苦手なことを無理に克服させるのではなく、子どもの得意なことを見つけて伸ばしましょう
2. 子どもに「できた」経験をたくさんさせて自信をつけましょう

※ 2017年12月・2018年1月号掲載


★教えてくれたひと


宮崎市 総合発達支援センター

大庭 健一 所長

小児科医。センター開設以来、15年間たくさんの子どもたちの発達相談を受けてきた。親には、「自信をもって子育てをしてほしい」と優しい口調で語りかける。